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里海再生実証試験報告

里海再生実証試験報告

報告書から抜粋

2 本実証試験地域における海の実態調査

2-1海面、海中の濁りと考察
(1) 波打ち際に変化
画像の説明
年々赤くなる砂浜
画像の説明
波打ち際は、どぶの様な色と臭いです。
画像の説明
砂に埋まっていたビニルも黒くなっています。
さらにその少し沖の方、大潮のときしか顔を出さない海底は
画像の説明
(2)海中の変化
○海底沈殿物
台風後の海底には、木片や木の葉が沈んでいる。
これが砂に埋まるなどして酸素不足の環境になると腐敗が始まる。
画像の説明
波打ち際の海草、海底の木の枝や葉っぱなど
遠い未来には、原油になる?

腐敗が(嫌気性分解)進むとメタンガスと硫化水素ガスが発生します。
○穏やかな海
きれいに見える海でも・・
○そのときのビーチ近くの海水は濁っている
画像の説明すでに波打ち際でも濁るようになりました);
○そのときの定点水深5mの海水サンプル
きれいな海でも中はこの濁り
この濁りの微粒子がサンゴや海藻にかぶさり窒息させ、太陽の光をさえぎる。
○その日の海中
透視度の悪さ
5mほどから先は見えない
透き通ってずっと先のサンゴまで見える美しさが、奄美の海の魅力でした。
透視度は5m
○水深5mほどから以深は見えない
海底が見えない
やはり透明度は5m程度と判断できる。
素もぐり漁では海底の魚を見つけてからモリを構えてもぐったものです。
潜ってサンゴを撮影
かつての青枝サンゴは泥をかぶっている
サンゴの窒息死
ほんの数年前まで美しかったサンゴ礁が次々にこのように死んでいます。
○海底
画像の説明
海底は砂ではない。
○ホースは1月で泥が被さる
堆積が早い
(3)台風の海
台風の濁った海
画像の説明大雨で流れ出た赤土も打ち寄せる

今年は、台風の進路の関係で、南よりと東よりの風が長く続き、試験地に大量のゴミを押し寄せたり、試験施設に被害をもたらすなど作業には厳しい状況となったが考察には参考にすべき環境の変化をもたらした。

2-2砂の変色比較

笠利湾内の赤土汚染が40年以上前から続いているため浜の色が変化していることは一般に知られている。
近年、浮泥が湾の口の方へ広がっていることを視認できる方法として、砂浜の色の比較をすることにした。サンプルの採取は、実証試験と同じ湾内から、湾内の出口寄り、実証試験地近く、湾奥に近い箇所、湾内最奥部、海藻が採れる環境から太平洋側から用海岸、東シナ海側から佐仁海岸で行った。
画像の説明
河口があり季節風で最も長く波が打ち寄せる。50年ほど前は白浜だったという。土と言っても良い。
大和城の下の浜
湾奥よりは白い
画像の説明
試験地の浜で赤茶けているのが分かります。
画像の説明
同試験地の台風のときしか波が来ない場所の砂です。かつての色に近いはずです。
画像の説明
画像の説明
佐仁集落の砂。いまだ海藻が取れることで有名な里海です。
画像の説明
佐仁集落の反対の太平洋側の砂、ここも潮の流れの速いところです。
これらのサンプルは保存して継続して比較していくことで変化を見ます。

3-2採取海水サンプルと考察

画像の説明

○持ち帰ったサンプル
画像の説明移動中多少こぼれる

持ち帰ったサンプルの濁り成分を取り出すためパレットに移した
1週間沈殿させて上澄みをそっと捨ててさらに乾燥させる。
画像の説明
○乾燥したサンプルの濁り成分
画像の説明土ですね
濁りの割には少ない感じである
乾燥を速めるため上澄み液をこぼしたが影響は小さいと考える

乾燥したものをかき集めた
粒子が細かいのだから粘土と言った方が良いと思われる
フルイ試験にかけられるよう保存しておく

○乾燥した海水の濁り成分の重さ
画像の説明
乾燥重量は、約26,400ccの海水中 26gである 
○海底泥サンプル
画像の説明ダイバーが海底で採取

○3か月後のサンプル
画像の説明

4湾内汚泥の除去実証試験

以上に示したように湾内の海中環境は悪化しており、まず汚泥を取り除き汚泥層を縮小させ不透明な境界面を下げることで次の赤土流入に備えることが急務である。そこで、湾内の海底に沈殿していく汚泥及びフロック(浮泥)をポンプアップ・ろ過して取り除くことにする。
4-1浮泥・海底汚泥除去の縮小モデル
画像の説明水槽試験

この泥をポンプで吸い上げて除去し沈殿層を縮小させ、その境界面を下げていき、サンゴや海藻の生息水域よりも深いところへ赤土を沈降させる。
流入する赤土等の沈殿物を減少させる手立ても早急に取り組まなければならない。
まさしく自然共生のモデルの確立を目指しているわけです。
○泥の除去作業のイメージ
画像の説明ポンプアップ
見えやすくするため海面を下げています。沈殿している茶色のフロックが分かります。
海中においてはフロックが潮流によって流れているのが観察される。
これの撮影は、フラッシュが乱反射して困難であった。
画像の説明
画像の説明
大まかに泥を取り除いた後の海底の様子。
サンゴなどが露出される。

○沈殿物の拡大写真 浮泥・フロック
画像の説明フワフワした浮泥・フロック
これは赤土を海藻が抱き込み沈殿したものであることをこれが乾燥したものに緑が混じっていることから予想したが最近の論文で同様の知見を得た。

○ポンプアップと取り出した泥
画像の説明

吸い上げられた泥。
海水と共に吸い上げられ泥はろ過して乾燥させて再利用できるはずである。
緑色のものが混じっているのが分かる。
有害物質の有無を確認するため成分分析を要する。

○吸い上げた泥の下の腐敗
画像の説明腐敗の黒

海藻が泥とくっつき死んで腐敗する。その低酸素、有毒ガスの層に生息するウニや貝も死滅することが確認できた。
ウニは、この水槽で生まれた稚ウニで笠利湾の環境ではこのようなことが起きているはずです。
画像の説明貝も生きられません

○海藻
海水を変えながら観察した海藻。
海水の入れ替えは、潮の満ち干きのように一度排出した後新たな海水を入れた。
入れ替えた海水からまた新たな沈殿物が付着する様子が分る。
画像の説明海藻は泥をひきつけます

○海藻に赤土が付着
画像の説明海藻に泥

海藻に赤土が付着している。
この付着物は、強い水流でも落ちません。つまり自然環境では元に戻りません。
死滅するだけです。

※ろ過モデルの追加
浮泥・汚泥を除去したときに海藻類が戻ってくるか実証が必要
画像の説明

2,3.4月で海藻が育つはずです。
成長しきれない理由は、
1 太陽光の不足 山が近い建物の位置による
2 海水の栄養塩の不足 
3 想定外

二段目三段目もろ過方法を工夫しておく。工事方法の参考になると思う。
事業報告後も継続していく。
海藻が育てば、実海面への応用も考えられる。

4-5 浮泥・汚泥の吸入作業

画像の説明
画像の説明
移動方法、送水ホース、電源コードの移動と延長をいろいろ試した。
画像の説明ポンプを吊り下げるブイ

さらに移動を容易にし、ともない水深を自由に変えられるようにするため
また電源コードのことも考えブイからの吊り下げ式にした。

○陸上ポンプによる吸入口
画像の説明陸上ポンプによる吸い込み

吸入風景が分かりづらいためストレートの口で吸入した。
水深6m付近
いろんな深さでこのように吸入することができる。

○吸入後送水管を通った先の濁水(ろ過システム参照)
画像の説明
画像の説明子供たちへの自然共生のお話
画像の説明吸い上げた濁り海水
1次ろ過後の海水は透き通っているように見えるが濁っている。

これは赤土(シルト)が微粒子でろ過することが難しいためである。
同時に沈殿も遅い。

そのため2次ろ過として炭を利用した。
画像の説明木炭のろ過能力試験
最大の難問であるろ過速度は、砂への浸透を含めていくつかの方法を組み合わせて効率を上げることと時間をかける事に落ち着く。
○効率的吸入口の試験
画像の説明吸入口の形状
画像の説明効率アップ
吸入後白い砂になっているのが分かる。

地道にこのような作業を広範囲に行うしかないと思う。
少し大きな海底掃除機は開発可能と考える。
○沈殿泥の吸入の前後・成果
画像の説明細かい泥が堆積
足ひれ(フィン)で海底を蹴るだけで泥が舞い上がり、周りが見えなくなります。作業効率が悪くなります。従って効率のいい作業方法、吸入方法が求められるのである。
○吸入箇所から埋もれたばかりのサンゴが見えてきた。
画像の説明泥の下から生きたサンゴ発見
まさにこのように珊瑚を守るためにいち早く大々的に公共工事として取り上げてほしいのである。それは、観光の低迷で経営が厳しくなっているダイビング業者と土木業者の仕事の創出にも繋がる。

4-6 赤土などの海への流入は川も原因

画像の説明

大雨の時には当然のことですが、川を通じて海へ流れ込みます。
そのときに赤土だけでなく川に堆積し腐っていたものも海へ流していることに気付いた。
残念なことに深刻な状況にやっと気が付いたのである。
画像の説明川の腐敗泥は汚染原因

大雨の後の茶色い水溜り、少し海へ流れ出している。また茶色の泡立っているのも分かる。
画像の説明大雨の川

雨が海へ流れ込んだ。
画像の説明この砂浜が堰になっている

水溜りが徐々に地下浸透で小さくなっていきます。
そのときに砂の表面に赤土などが付着して残ります。
これは次の雨水の浸透を妨げることと大雨で海へこの微粒子が海へ流れることをとめるために取り除きます。

水溜りの縮小(雨水の地下浸透)についての計測を行った。

○この表層の赤土と砂のサンプルを採取する。
画像の説明大雨の後の表層土
○砂の表面の赤土をかき集める
画像の説明表層土を除去
できる限り赤土除去作業を行う。
表層の泥は粘度であり雨水の地下浸透を妨げる。
今まで相当な量の腐った小枝、枯葉が海へ流れたはずです。
作業を長く続けると頭痛がします。後日危険性について調べた。
川底がきれいになるほどにこの症状はなくなりました。
硫化水素ガス(毒性)によるものと考える。
画像の説明
画像の説明
作業を続けると大分きれいになりました。
画像の説明

また大雨が降ったが水はけが大分良くなったのがわかります。
画像の説明

まだ黒い部分がだいぶあります。さらに掃除を続けます。
この腐ったどぶの色の箇所を少し掘り返すと必ず腐った小枝などがあります。
これを取り除くことが作業的には効率的と判断した。
EMとマイクロバブルの酸素供給も考えられた。

画像の説明
画像の説明

これは、水槽内で海藻を海水を換えずに放置して腐敗させたものである。
砂は黒く変色しどぶの臭いがする。この水槽に大気のマイクロバブルを注入してやると二日目には、元の砂の色に戻った。
今後はこの手法で海底の浄化を試したい。
EMについては、現在海水で利用できるようテスト中です。

実証試験を終えて提言

梅雨時期になると毎年叫ばれる赤土汚染。梅雨に入り水量が増えることにより赤土の微粒子が海へ流れ込み海藻やサンゴに付着し呼吸を止め死滅させ魚の住家や産卵場所をも無くしている。

赤くなった海、特に奄美の特徴的地形の入り江になった場所やヨロン島の様に環礁で外海と分けられた内海で被害が大きい。
赤い海は、微粒子の沈殿と共に澄んで行く。見た目エメラルドグリーンの海に戻ってくが、少し潜ると1メートル先も見えない光の届かない貧酸素の死の海が広がりつつある。
干潮時に魚が避難していた潮溜まりもこの状態であるからかつてのような磯の恵みがなくなるのは当然である。

この微粒子の浮遊物は、実は、赤土だけでなく洗剤など生活排水に含まれる有機物、窒素、リンが化学反応分解や微生物による生分解でできるものも多く含まれる。

分解対象物が処理能力を超えると腐敗が起きる。

これは、生物に有害なものを生成するので、生分解で水中の酸素が大量に消費され貧酸素の状況が起きるため一気に貝類など移動速度の遅いものは死んでいく。
腐りだすと一気に死滅し腐っていくのである。

沈殿池の役を担っていた水田は、畑となり、便利の追求で公共工事や生活排水によって、私たちは、かつての田舎暮らしの象徴だった身近の海を失った。

いつまで経っても「赤土汚染を防止しよう」ではなく、「海を再生しよう」と真剣に行動を起こすべきです。下水処理など海の汚染を防止すると共に海の底をクリーニングしなければなりません。

技術的には、浄化槽の管理のように汚泥を取り去り、光と酸素を送り届けることです。

これこそが今求められている最優先の課題であり、公共工事で行うべきではないでしょうか。世界遺産、国立公園、海の再生なくしては恥ずかしく思います。
そしてその工法は、世界へ特に東南アジアへ発信できるよう夢を持って進めたい。

以上(要約)のように試験を行ってきたが、事業年度の関係で報告書を作成し提出した。
里海の再生を目指してさらに活動を続けて行きます。
その活動資金のためここまでの詳しい経過とまとめを製本して販売します。 [ 2500円/冊 ]
皆様のご支援をよろしくお願いします。以下目次を参考までに。

笠利湾における浮泥・汚泥除去実証試験報告書 製本版

目 次
はじめに
(1)趣旨
1海への赤土の影響と除去技術に関する研究の現状
1-1論文、特許技術など
1-2赤土による海中濁度測定方法
2本実証試験地域における海の実態調査 
2-1海面、海中の濁りと考察
(1)波打ち際の濁り (2) 海中の変化 (3)台風の海 (4)穏やかな海 
(5)川からの流出 (6)季節風(北風)後の海
2-2湾内砂浜の変色比較
3本実証試験における測定装置と測定方法
3-1測定装置と測定方法
(1)指定深度海水サンプリング器
(2) 海底の泥サンプリング器
(3)沈殿試験
3-2採取サンプルと考察
4湾内汚泥の除去実証試験
4-1実証試験縮小モデル
※ろ過海水モデルの追加
4-2システム設計
4-3ろ過装置
4-4そのほかの実験機器 ○ 河川工事のろ過装置の現状
実証試験と考察
4-5浮泥と汚泥の吸入作業
4-6赤土などの海への流入は川も原因
川の大雨後の水溜りの縮小計測(地下浸透)
4-7枯葉など腐敗対象物の川への流入
4-8台風被害後の夜間作業
4-9笠利湾内の海水と外界に望む海岸の海水の比較
4-10変色した砂の洗浄試験  台風の効果 マイクロバブルの活用
4-11海中ネットに付着する浮泥
5まとめ
5-1海と鉄分と赤土 笠利湾の海中環境
5-2実証試験のまとめ
5-3笠利湾の環境改善への手順の提案

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